今日もラウル氏が法王と対談された模様。予定に従えば、今頃法王はハバナへ向かわれているところだろう。
フィデル・カストロさんは、書評で是非ベネディクト16世とやややかな会談を行いたいと書かれた。現地時間の水曜日、つまりキューバにおける法王巡礼の旅の最終日にカストロさんとの対談が実現することになった。

ローマ法王 カストロ議長と会談NHK
カリブ海の社会主義国キューバをローマ法王として14年ぶりに訪れているベネディクト16世は、ラウル・カストロ国家評議会議長と会談し、キューバ国内の人権状況などについて意見を交換しました。

ローマ法王は27日、キューバの首都ハバナでラウル・カストロ国家評議会議長と1時間にわたって会談しました。
会談の詳細は明らかになっていませんが、ローマ法王庁によりますと、キューバ国内の人権状況やカトリック教会の権利拡大が議題になったということです。
欧米諸国は、キューバには反政府活動を理由に大勢の政治犯が服役しているとして、早期に釈放するよう求めていて、会談では、こうした問題について話し合われたものとみられています。
また、ローマ法王は、キューバ訪問の直前に「マルクス主義は時代遅れだ」と発言していましたが、会談ではキューバの政治体制が議題に上ることはなかったということです。
一方、キューバ側では、ムリージョ国家評議会副議長が27日、法王の発言に反応する形で「キューバでは経済改革に取り組んでいるが、政治改革は起こらない」と述べ、社会主義体制を維持していく姿勢を強調しています。


相変わらず「マルクス主義は時代遅れだ」の発言に執着している国内外の各プレス。他国に政治体制の変革を呼びかけ、考え方を押し付けることは内政干渉になるということから勉強しなおしてもらいたいものだ。さしずめ、国外の主要プレスの記事でそんな書き方をしているから、足並みそろえてそんな報道をしているのだろう。

Los tiempos difíciles de la humanidad  Reflexiones de Fidel
人類の困難な時代

記事では、昨日の核セキュリィーサミットについて触れられていた。この問題に対処するのに、マルクス主義者もクリスチャンも平和のために共に戦わなければならない。しばしば誤解されているのは両者が対立完成にあるという、間違ったイメージだ。そのことは前の記事で触れた。
2012.02.24 教会が諭す「汝の隣人を汝のごとく愛せよ」はキューバ革命の精神でもある~宗教はアヘンか?~

ゲバラやラウル氏と違い、カストロさんはもともと共産主義者ではなかった。カストロさんはバティスタ独裁からキューバを解放するために闘われていたわけだが、その拠り所になっていたのは、ホセ・マルティであり、彼が諭したモラルにあった。モラルは教育によって育まれるものだが、カストロさんは高校時代、カトリック教会のベレン校で学ばれた、つまりカトリック教会の諭すモラルに少なからず影響を受けている。

以上のことを考えれば、カストロさんと法王が会談を望まれている事情が分かるだろう。それは政治的な駆け引きが行われる会談ではなく、長年多くの人にモラルを諭してきた聖人の会談といえるだろう。すこし、誇張した表現になっちゃったけど、言ってみればそういうことなのだ。
スポンサーサイト
98年にローマ法王を社会主義国キューバへ受け入れたカストロさん。両者は敵対関係にあるのではないか、というのが世間一般のイメージだろうが、それはメディアが伝える歪んだ図式に過ぎないということを前回の記事で書いた。
今日はこのテーマについて書こうと思う。
papa verde
↑は丁重に法王をもてなす、カストロさん。しかしカストロさんは神を信じなかったのではないか?混乱する人も多いことだろう。オリバー・ストーン監督の映画「コマンダンテ」の後半箇所の次のようなやりとりに、謎を解くヒントが隠されている。

-あなたは無神論者なのですか?
No creo en todo eso que el hombre ha creado.
私はヒトがつくったものは全て信じない。
-あなたは無神論者ですが、ローマ教皇を丁重にもてなしました。
宗教は民衆にとってアヘンであると考えていますか?
Todo depende.
Si la religión se usa para crear valores,hacer el bien, consolar,no es un opio.
すべては状況による。
価値観の形成や善意、慰めのために利用されるなら、宗教はアヘンではない。
Pero si utilizamos las creencias para defender una mala causa, entonces sería un opio.
La religión consuela a mucha gente,la tendencia del ser humano es a creer.
しかし宗教が悪い主義主張を擁護するために利用されるなら、その時はアヘンになる。
多くの人々を慰める宗教をヒトは信じる傾向にある。

コマンダンテ COMANDANTE [DVD]コマンダンテ COMANDANTE [DVD]
(2007/12/05)
オリバー・ストーン、フィデル・カストロ

商品詳細を見る

この「宗教は人民のアヘン」はマルクスの有名の言葉で、彼の宗教観を巧みに言い表している。
cf マルクスの宗教観wikipedia
上記の応答ではマルクスの考え方を分かり易く解説されている。
阿片は中毒を引き起こす麻薬であるとともに、当時、緩和医療での疼痛などの痛み止めとしても使用されていた、とwikipediaで解説されているように、アヘンに喩えられる宗教は一長一短があるわけだ。古代ローマ帝国の統治にキリスト教が用いられてきたことは周知の通りだが、これは現在社会においても言えることなのだろう。モラルを保つ意味では有用な用い方だが、宗教が人々を盲目にさせることを悪用する輩がいるというわけだ。

キューバ革命とカトリックについては、ブラジル人修道士フレイ・ベトさんの著作「フィデルと宗教」(Frei Betto. FIDEL Y LA RELIGIÓN. 1985)に詳しく記されている。邦訳では後藤 政子さんの「カストロ 革命を語るで一部を読む事が出来る。
カストロ 革命を語るカストロ 革命を語る
(1996/01)
後藤 政子

商品詳細を見る


カトリック教会とキューバ革命の摩擦の原因が、カトリック系の私立学校が反革命運動の拠点となっていたことにあると、カストロさんが上記のインタビューで応えられている。キューバは他のラテンアメリカと違い、持てる者にカトリックが浸透していた事情があり、教会は金持ちの文化になっていた。

革命が進行すると同時に、持てる者たちは、持たざる者であるカンペシーノ(農民)のように革命に同調できず、距離を置くようになった。そこでカトリック教会が悪用された。このような経緯があって、革命政権は私学学校を国有化せざるを得ず、溝がさらに深まった。

しかし、注意すべきは革命政権はカトリックを否定したわけではない、ということ。カストロさんは、個人としては無神論者だが、カトリックの教理に対してはむしろ賞賛されている。そのことは、上記のベト修道士のインタビューでカストロさんの応答から読み取れる。


下記は、邦訳にない箇所なのでCubaDebateの原文を自前の意訳で掲載する。
“… que nosotros podíamos suscribir perfectamente casi todos los mandamientos de la ley de Dios, tienen mucho parecido con los nuestros.
「われわれは教会の教えに概ね同調できる、われわれの主義と多くの点で類似しているのだ。
Si la Iglesia decía: “no robar”, nosotros aplicábamos con rigor también ese principio: “no robar“. Una de las características de nuestra Revolución es que suprime el robo, la malversación y la corrupción.
教会が「汝、盗むなかれ」と諭したように、われわれもこの「汝、盗むなかれ」という行動原理を厳格に適用した。
われわれの革命の特長のひとつは、盗み、横領、汚職を撤廃することにあるのだ。

Si la Iglesia decía: “amar al prójimo como a ti mismo”, eso es, precisamente, lo que nosotros predicábamos a través de los sentimientos de solidaridad humana que están en la esencia del socialismo…, el espíritu de fraternidad entre los hombres, que es también uno de nuestros más apreciados objetivos.
教会が諭す「汝の隣人を汝のごとく愛せよ」はまさに、社会主義の精髄である人類連帯の精神を通して我々が説いていたことだ...,それは人々の間に育まれる友愛の精神であり、われわれが最も賞賛すべきことでもあるのだ。
(Frei Betto. FIDEL Y LA RELIGIÓN. 1985)
Fidel habla de Religión (Fragmentos)
http://es.scribd.com/doc/66427854/Fidel-y-la-religionより前後原文補足

フレイ・ベトさんのインタビューは、カトリック教会がキューバ革命体制に対して好意的な印象を抱くきっかけを与えた。おそらくローマ法王もこの著作を一読されたことだろう。両者のあいだには、ひとつの大きな共通項、モラルを尊重する精神があるのだ。

キューバ革命後、教会は閉鎖されず、聖職者も虐げられることはいっさいなかった。プラヤ・ヒロンで祖国を裏切った司祭に対しても、革命政府は暴行したりしなかったのだ。これはカストロさんがシエラ・マエストラから一貫してきた方針。その根底にはくどい様だがモラルがあるンっすね。