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今年の7月末に出版されたばかりの新書。僕が図書館で借りて読んだのは、先々月ぐらいだったけど感想を書くのを忘れていました。ゲバラの最期を描いた本では、最も質が高い一冊。何より心に訴えるものがある本だった。今手元に本は置いてないが、良書なので覚えている範囲で書いてみようと思う。

チェ・ゲバラ 最後の真実チェ・ゲバラ 最後の真実
(2011/07/22)
レヒナルド ウスタリス アルセ

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ボリビアでのゲバラの闘いは、悲惨な様相を呈していただけに読むに耐えない。現地共産党の裏切りから計画は瓦解、いわば負け戦であった。しかし、この本で描かれたゲバラの最期はそのような痛々しさや悲しさ以上のものを読者に伝えるのではないだろうか。ゲバラが最期まで、自らの目的を見失わず、自らの信条を貫き通た様が巧みに描かれている。ゲバラは自らの尊厳を最後の最後まで護った。

チェロの闘いで、ボリビア兵に捕らえられ、殴られた際に、「殴るような真似はしてはならない、そんなことをするなら俺を撃て」とゲバラが言い放つシーン。捕られても、ボリビア兵に革命の大儀を語るシーン。銃殺される際に、ボリビア兵に「しっかり狙え」と喝破するシーン。いずれも、ボリビア兵の心をゲバラが動かしている様が描かれている。
なかでもウエルタ少尉がゲバラに心を動かされ、上官のセンテノ・アナジャ大佐からの、ゲバラ殺害命令を拒否したエピソードは興味深い。このようにカリスマに兵士が心を動かされる心理的描写は、二流映画などでは描くことは出来ない。

ゲバラのボリビアでの活動は、数多くの当事者や関係者によって書かれている。しかし、ゲバラの最期については人によって描かれ方が違う。著者のウスタリス・アルセさんは、マジョール・デ・サン・シモン大学医学部卒後、62~67年医師としての仕事の傍ら、プレンサ・リブレ紙の記者として働かれた。チェの死因は暗殺であるという事実をいちはやく世界に伝え、後に、この発言により身の危険を感じブラジルへ亡命された。したがって、この本はジャーナリスト、医師としての立場からゲバラの最期が描かれている。そして何より特記したいのは、著者は熱烈なゲバラファンであることwそれはもう描写の巧みさなどからも、ひしひしと伝わってくる。

後半の章では、ゲバラの様々な素顔が描かれている。「数学者としてのチェ」「嘘をつけないチェ」などは興味深かった。また、キューバ革命時のゲリラ戦も証言を元に熱く記されている。なかでもゲリラの拠点であったシエラ・マエストラからラスビジャスの平野を横切ってエスカンブライへ行進する際の描写は圧巻だ。

証言とは時に揺らいだりするもの。それが何十年も過去のことならなおさらだ。どこまでが、真実であるかの判断は読者にゆだねられる。しかし重要なことは、著者が何十年もかけて証言を収集し、数多くの断片を一冊の本に組み立てたことだ。コアなゲバラファンから、あまりゲバラについて知らない人まで楽しめる内容となっているこの本は、是非多くの方に薦めたい一冊だ。
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 昨日ラテンビート映画祭で観て来た「雨さえも~ボリビアの熱い一日~」は、ボリビアで実際に起きた「水戦争」を扱った心に残る映画だった。コロンブスの新大陸発見を描くために映画製作陣は、安い労働費用を目当てにボリビアのコチャバンバで、撮影を行う。そして映画のエキストラに選ばれたボリビア人先住民族が多額の水道料金を課す外資企業に反発する抗議運動を展開するという設定だ。巧みな脚本設定の下、コロンブス新大陸発見以後ボリビアから金銀を収奪した搾取構造と、今日ラテンアメリカを苦しめている新自由主義システムが見事に重なる演出だ。

 映画の舞台であるコチャバンバ(Ciudad de Cochabamba)は、チェ・ゲバラがボリビア軍の銃弾に倒れたラ・イゲラ村と首都ラ・パスの中間に位置する、アンデス山脈中の東西に伸びた盆地内にある。年間降水量は約500mmと乾燥した地域で、5月から9月にかけてが乾季であり、降雨は非常に少なく月間数mm程度だそうだ。。。市内は上水道設備の整備の遅れなどから慢性的な水不足になっている過酷な地域。長年独裁政権がのさばったボリビアは怠慢と腐敗が蔓延し、このような過酷な状況を改善しようとしない。そこに目をつけたのが、北の大国の民間企業であった。16世紀では先住民族に対する”教化”政策の名の下、多量の金銀が搾取された。今日では”民営化”の名の下に、ボリビア現地人の生活の営みに不可欠な水が奪い取られたわけだ。
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 この映画内の映画(ややっこしいけどw)を製作する、スペインの映画監督のセバスチャンを演じるのは、ガエル・ガルシア・ベルナル、プロデューサー役のコスタを演じられるのは、ルイス・トサル。安いエキストラ料金目当てにケチュア語を話せる先住民族をエキストラに登用するという設定からも分かるように、彼らもまた搾取する側である。投資資金を集めるために英語でアメリカとやりとりし、現地のエキストラ、ダニエルがそばにいるにもかかわらず、彼のことをfucking good manと愚弄するルイス。16世紀ではスペイン語を話す者が、ケチュア語を話す先住民を酷使した。今日ではスペイン語を話すものたちが、英語を話す人達に仕えていることを描いている。

 そんなコスタも、水戦争に巻き込まれ、先住民族と接していくうちに心境が変わってゆく。水戦争が収束して、ダニエルと心を通わすようになるラストシーンでは不覚にも涙ぐんでしまった。一方ガエル・ガルシアが演じるセバスチャンは、搾取構造に疑問を投げかけはするが、水戦争に深入りするコスタを引きとめようとする。モーターサイクル・ダイアリーズなどでゲバラを演じたガエルのイメージが強く残っているが、この作品では2番手に甘んじている。興味深いのは、映画が過度に投機の対象となっている映画業界の現状も巧みに描かれている点だ。

 この映画の見所は、キューバでスペイン征服者に対して最初に決然たる反逆運動をした人物アトゥエイを映画内で演じるダニエルが、木の十字架に貼り付けられ、ベラスケス指示の下、火あぶりの刑に処せられるシーンだが、とても印象に残っている。見せしめのために集められた先住民族が、アトゥエイの名を歴史に刻むために、叫び強烈なシーン。そこから一転して、今日の水戦争のクライマックスへと移行する演出で、映画を観るものをコチャバンバ水戦争へと誘う。とても臨場感があった。
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 水戦争については軽い知識しかなかったが、この映画に啓発されて早速調べてみた。映画ないでは、コチャバンバ市民が新自由主義に対して勝利する結末で終わるが、実はこの問題はそう単純ではない。水戦争に勝ったからといって、良質の水が供給されるわけでもないのだ。これからは、SEMAPA(ボリビア・コチャバンバ公営水道)が、水という公共財をいかに効率的に供給していくかという課題が残されている。つまり、新自由主義を標榜するエリートと、コチャバンバ民衆との戦いは未だに続いているといえる。彼らは、ラテン・アメリカにIMFの圧力を払い除け、自ら解決の糸口を見出すことが可能であることを示さなければいけない使命を背負っている。

 2つの時代のグローバリズムを映画内で描く脚本の巧みさには圧巻だ。ラテンビート映画祭でしか上映されないのはもったいないと思う。水不足なんか日本と無縁だなンて考えて、観ない訳にはいかない。日本では今週本州に上陸した台風に見舞われ、逆に洪水を起こす事態を目の当たりにしたばかりだ。水は有り余るほどあり、浄化する技術も優れている。しかし、この映画で示しているのは水の争奪戦そのものではなく、グローバリズムを通して展開される新自由主義という搾取構造に他ならない。日本では、郵政民営化の次は、水道事業の民営化が起きるのではないかと懸念されている。我々日本人にとっても、この問題は無縁ではないに違いない。
先月のアレイダ・ゲバラさんの公演で同席した人に紹介して頂いた本を読んでみました。バイクとゲバラ、そしてラテンアメリカ好きなら読むっきゃないっすね!

遥かなるゲバラの大地遥かなるゲバラの大地
(2006/06/29)
戸井 十月

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前から気になっていた本ではあったけど、まだ手に取ったことがなかった戸井さんの本。

ツーリングの楽しみの一つは、旅先のトラブルだったりする。国内のツーリングだったらトラブルといっても知れているけど、南米一周となると話は違ってくる。戸井さんが走破されたルートは、パタゴニアの氷原から、アマゾンの密林、アンデス。ツーリング計画が壮大なだけに、厄介事も至難極る事だろう。読者は冒頭の、走破ルート地図を見た瞬間そう感じるはずだ。この戸井さんの著書は、そのような読者の期待を裏切らない。

この著書のもう一つの魅力は、南米のマイナーな側面も垣間見ることが出来ることだろうか。ギニア、スリナム、ガイアナなんて国を走行ルートに入れられているとは、なんともマニアックだ。普通の観光客があまり行かなそうなところを楽しめるのも、ツーリングの醍醐味。南米大陸というミステリー溢れる大陸でのバイクの旅先で、書き残されている戸井さんの記述には興味をそそられた。といっても、ぞっとするような側面も描かれている。人の肉に卵を植え付けるアマゾンの肉蝿などの存在には正直ゾッとさせられたwでも南米ではこんな蝿ごとき、まだまだ序の口なのだろう。

僕もいつか南米大陸をバイクで旅したいなぁと感じさせられつつも、やっぱり無理だろうなwと思う。旅の費用がない以前に、僕には戸井さんのような度量がない。それでも、人間味溢れるラテン圏の大陸を旅することは憧れる。僕はせいぜいイベリア半島を一周するぐらいが相場だろうか。

北か南か、アメリカ大陸をバイクでツーリングするとしたら、大抵の人が北を選ぶのだろうか。南米は、得体の知れない生物が生息し、疫病、窃盗、悪路など厄介ごとが多々待ち受けている。それに対して、北米は先進国だし滅多なことはないだろう。でも、僕は同じアメリカ大陸をツーリングするなら南米を旅してみたい。あくまで憧れではあるが。
戸井さんの、この著書では人間味溢れる笑みを浮かべた現地の人々の写真が掲載されている。そう、旅の最大魅力は戸井さんも書かれていることだけど、人との出会いなんですね。北米のドライな気質の国ではなく、そのような大陸をバイクで走ってみたいものだ。

カストロさん、ゲバラらが中心となって起こしたキューバ革命の魅力も、この人間味溢れる点にあるのではないかと思う。カストロさんもよく、キューバ革命の特徴はヒューマニズムだと言われている。そして革命後のキューバはラテンアメリカの中でも一番ヒューマニズムを体現した国ではないだろうか。でも、元をただせば、彼らラテン圏の住民は経済力より人間味を大切にする気質なのだろう。戸井さんの旅のレポを読んでいるとそんなことを感じさせられた。

心の奥底ではヒューマニズムを大切にしつつも、経済発展も同時に果たしていかなければならないラテンアメリカ。戸井さんの最終目的地、ゲバラの死地バジェ・グランデもいまは観光地として栄えている。ゲバラのことをより多くの人が興味を持って、現地を訪れることは良いことではあると思うけど、一方で静かな村をそっとしてあげた方がいいのではないかとも感じる。ゲバラが眠る大地は今後どのように変遷していくのだろうか。
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