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98年にローマ法王を社会主義国キューバへ受け入れたカストロさん。両者は敵対関係にあるのではないか、というのが世間一般のイメージだろうが、それはメディアが伝える歪んだ図式に過ぎないということを前回の記事で書いた。
今日はこのテーマについて書こうと思う。
papa verde
↑は丁重に法王をもてなす、カストロさん。しかしカストロさんは神を信じなかったのではないか?混乱する人も多いことだろう。オリバー・ストーン監督の映画「コマンダンテ」の後半箇所の次のようなやりとりに、謎を解くヒントが隠されている。

-あなたは無神論者なのですか?
No creo en todo eso que el hombre ha creado.
私はヒトがつくったものは全て信じない。
-あなたは無神論者ですが、ローマ教皇を丁重にもてなしました。
宗教は民衆にとってアヘンであると考えていますか?
Todo depende.
Si la religión se usa para crear valores,hacer el bien, consolar,no es un opio.
すべては状況による。
価値観の形成や善意、慰めのために利用されるなら、宗教はアヘンではない。
Pero si utilizamos las creencias para defender una mala causa, entonces sería un opio.
La religión consuela a mucha gente,la tendencia del ser humano es a creer.
しかし宗教が悪い主義主張を擁護するために利用されるなら、その時はアヘンになる。
多くの人々を慰める宗教をヒトは信じる傾向にある。

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オリバー・ストーン、フィデル・カストロ

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この「宗教は人民のアヘン」はマルクスの有名の言葉で、彼の宗教観を巧みに言い表している。
cf マルクスの宗教観wikipedia
上記の応答ではマルクスの考え方を分かり易く解説されている。
阿片は中毒を引き起こす麻薬であるとともに、当時、緩和医療での疼痛などの痛み止めとしても使用されていた、とwikipediaで解説されているように、アヘンに喩えられる宗教は一長一短があるわけだ。古代ローマ帝国の統治にキリスト教が用いられてきたことは周知の通りだが、これは現在社会においても言えることなのだろう。モラルを保つ意味では有用な用い方だが、宗教が人々を盲目にさせることを悪用する輩がいるというわけだ。

キューバ革命とカトリックについては、ブラジル人修道士フレイ・ベトさんの著作「フィデルと宗教」(Frei Betto. FIDEL Y LA RELIGIÓN. 1985)に詳しく記されている。邦訳では後藤 政子さんの「カストロ 革命を語るで一部を読む事が出来る。
カストロ 革命を語るカストロ 革命を語る
(1996/01)
後藤 政子

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カトリック教会とキューバ革命の摩擦の原因が、カトリック系の私立学校が反革命運動の拠点となっていたことにあると、カストロさんが上記のインタビューで応えられている。キューバは他のラテンアメリカと違い、持てる者にカトリックが浸透していた事情があり、教会は金持ちの文化になっていた。

革命が進行すると同時に、持てる者たちは、持たざる者であるカンペシーノ(農民)のように革命に同調できず、距離を置くようになった。そこでカトリック教会が悪用された。このような経緯があって、革命政権は私学学校を国有化せざるを得ず、溝がさらに深まった。

しかし、注意すべきは革命政権はカトリックを否定したわけではない、ということ。カストロさんは、個人としては無神論者だが、カトリックの教理に対してはむしろ賞賛されている。そのことは、上記のベト修道士のインタビューでカストロさんの応答から読み取れる。


下記は、邦訳にない箇所なのでCubaDebateの原文を自前の意訳で掲載する。
“… que nosotros podíamos suscribir perfectamente casi todos los mandamientos de la ley de Dios, tienen mucho parecido con los nuestros.
「われわれは教会の教えに概ね同調できる、われわれの主義と多くの点で類似しているのだ。
Si la Iglesia decía: “no robar”, nosotros aplicábamos con rigor también ese principio: “no robar“. Una de las características de nuestra Revolución es que suprime el robo, la malversación y la corrupción.
教会が「汝、盗むなかれ」と諭したように、われわれもこの「汝、盗むなかれ」という行動原理を厳格に適用した。
われわれの革命の特長のひとつは、盗み、横領、汚職を撤廃することにあるのだ。

Si la Iglesia decía: “amar al prójimo como a ti mismo”, eso es, precisamente, lo que nosotros predicábamos a través de los sentimientos de solidaridad humana que están en la esencia del socialismo…, el espíritu de fraternidad entre los hombres, que es también uno de nuestros más apreciados objetivos.
教会が諭す「汝の隣人を汝のごとく愛せよ」はまさに、社会主義の精髄である人類連帯の精神を通して我々が説いていたことだ...,それは人々の間に育まれる友愛の精神であり、われわれが最も賞賛すべきことでもあるのだ。
(Frei Betto. FIDEL Y LA RELIGIÓN. 1985)
Fidel habla de Religión (Fragmentos)
http://es.scribd.com/doc/66427854/Fidel-y-la-religionより前後原文補足

フレイ・ベトさんのインタビューは、カトリック教会がキューバ革命体制に対して好意的な印象を抱くきっかけを与えた。おそらくローマ法王もこの著作を一読されたことだろう。両者のあいだには、ひとつの大きな共通項、モラルを尊重する精神があるのだ。

キューバ革命後、教会は閉鎖されず、聖職者も虐げられることはいっさいなかった。プラヤ・ヒロンで祖国を裏切った司祭に対しても、革命政府は暴行したりしなかったのだ。これはカストロさんがシエラ・マエストラから一貫してきた方針。その根底にはくどい様だがモラルがあるンっすね。
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今月に入ってから革命広場で、ローマ法王受け入れの準備をすすめているキューバ。↓来月下旬に予定されている法王の訪問はキューバにとってきわめて大きな意味を持つからだ。
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En fotos, la Plaza de la Revolución de La Habana se prepara para la visita del Papa
日本のメディアもすでに報じていた。以下、日経より

ローマ法王、カストロ前議長と会談希望
2012/2/19 18:41
ロイター通信によると、3月下旬にカリブ海の社会主義国キューバを訪問するローマ法王ベネディクト16世が、同国のフィデル・カストロ前国家評議会議長(85)との会談を希望していることが分かった。法王庁(バチカン)高官が18日、明らかにした。

 病気療養を理由に2008年に議長職を退いたカストロ氏は、最近は公の場にあまり姿を見せない。同高官も会談は「(カストロ氏の)健康状態次第だ」と述べた。

 法王は3月23~26日にメキシコを、26~28日にキューバを訪問する。法王のキューバ訪問は1998年のヨハネ・パウロ2世以来で、当時の訪問は同国が宗教活動に対する規制を緩和するきっかけとなった。(ローマ=共同)


Pope wants to see Fidel Castro on Cuba trip Reuters

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工事中っすね。来月、ゲバラが見守る革命広場にローマ法王が訪問される。

われわれ日本人には比較的、馴染みがないカトリック教会だが、ラテン圏では絶大な影響力を持つ。教会の指導者、ローマ教皇を迎える会場を整えることは自然なことなのだろう。↑の動画は、98年のヨハネ・パウロ2世が訪問した際のもの。カストロさんがローマ法王を気遣いながら案内している様子が見て取れる。ここで、ひとつ大きな疑問を抱く人もいるかもしれない。社会主義のイデオロギーとキリスト教は相反するのではないか?と。

カストロさんのことをよく知る前は、僕もこの両者は敵対関係にあるんだし、当然相容れないだろう、キューバが受け入れるなんてセンセーショナルなことだな、なんて感覚だった。しかし、それはメディアが伝える歪められた偏見に過ぎない。少なくともカストロさんが治めるキューバにおいてはそういえる。

そのことはカストロさんの演説やインタビューなどから知ることが出来る。このブログでは、余裕があれば来月にかけてカストロさんの宗教に対する考え方をテーマに記事を書いていこうと思う。僕はキリスト教徒でもなんでもないが、興味深いテーマだからだ。
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