司馬遼太郎の「坂の上の雲」は、僕の好きな小説のうちの一冊。この小説の大河ドラマが作られ続けて、今年で最終部を迎える。昨日はNHKで総集編をやってたのを観たんだけど、今日もたまたまBSかけてたら、ちょうど秋山真之がキューバへ赴いているシーンが映っていた。彼は観戦武官として米西戦争を視察していたのだ。彼がキューバに行かなければ、恐らく小説で扱われるまでの大物になっていなかっただろう。秋山はサンティアゴ・デ・クーバ湾で行われた作戦から閉塞作戦の有効性と問題点をまとめ論文を書いた。それは後に日露戦争における日本海軍の旅順港閉塞作戦に応用された。

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↑旅順↓bahia de santiago de Cuba。どっちも閉塞作戦にぴったり。

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NHKドラマのナレーションは以下のように、解説していた。
多少、神秘的に言えばアメリカとスペインが日露戦争の旅順港閉塞作戦の雛形を秋山に提供してくれるために、闘ってくれたようなものである。天が秋山をキューバへ遣わせた謂れである。
秋山は世界でもっとも熱い独立闘争の地、サンティアゴ・デ・クーバで、日本の独立維持のために日露戦争を勝利へ導いた海戦の理論を築いたのだ。

ドラマ内で米西戦争の勃発を聞いた秋山は、アメリカ軍人が「きっかけが必要なんだよ」と言っていた事を思い出すシーンが、フラッシュバックで描かれていた。戦争には大義名分がいる。1898年2月15日に起こったハバナ湾でアメリカ海軍の戦艦メイン号爆破事件は、真相が不明のまま、この爆破の犯人はスペインだと勝手に決め付けられ、それがアメリカ介入の大義名分になった。実際にアメリカが手を下したかどうか、今となっては分からず仕舞い。ただ、状況証拠、そしてその後の歴史が示すようにアメリカが明らかに怪しい。例えば、ベトナム戦争の勃発の大義名分がトンキン湾事件という茶番だったように。。

米西戦争以前から、キューバは宗主国のスペイン相手に闘って来た。キューバの独立は長年の悲願だった。それをアメリカの介入によって横取りされたのだった。そして、この戦争から約半世紀後、マキシモ・ゴメス、アントニオ・マセオそしてホセ・マルティらかつての独立戦争の闘志の意志を受け継いだ革命家、フィデル・カストロが、民衆からの圧倒的な支持を得て真の独立を勝ち取ったのだ。これを煙たく思ったアメリカは、2度目の「メイン号事件」を起こすことを企んだ(但しこれも証拠がない)それが、1960年3月5日に起きたフランス船ラ・クーブル号爆破事件だ。この時にあの有名なゲバラの写真が撮られた。僕にはあの「ゲリラの英雄」と名づけられた写真のゲバラの瞳からは、長年キューバを汚いやり口で苦しめてきた北アメリカの帝国主義に対して憤った、ゲバラの闘志が読み取れる。
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ちょっと脱線したが、「坂の上の雲」の時代はこうしてみて見ると、ちょうど米西戦争の時期と重なる、つまり世界中が帝国主義に覆われていたことを改めて気づかされる。日露戦争は、日本を征服しようと南下してきたロシアの帝国主義に対する闘いだった。もし、日本が負けていたら対馬には軍事要塞が築かれ、ロシアは容赦なく日本領土を蹂躙していただろう。また、多額の借金を国家がしてたから、その取立てからも苦しんだことだろう。佐世保や横須賀は、ロシアが占領して属国化していく。。。そう考えると、祖国の先人の方々がロシアの帝国主義を打ち破ってくれたことの重みが感じられる。もっとも、日露戦争では乃木将軍のような指揮官が無用に多くの血を流させもしたが。

秋山兄弟のように、純粋に国家のために働ける人が、21世紀の日本に待望される。つい先ほど、明治維新を思わせる名称を掲げた「維新の会」橋下氏・松井氏が当選確実となった。こんなご時勢だからこそ、民衆は浪漫を求める。僕は聊か懐疑的だが、大阪から日本を一新する「大阪都」どこまで真剣に練られた構想なんだろうか。

それはともかく「坂の上の雲」の最終部が放送されるのが楽しみだ。
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新聞では”対リビア介入 重い腰”と見出しが出ている。本当は介入したいが、国際世論の反発を恐れる欧米諸国の思惑が感じられる。
2月23日にカストロさんの書評NATOのリビア占領計画 El plan de la OTAN es ocupar Libia【 Reflexiones de Fidel】を紹介したが、現実問題として浮上している。「20世紀の最後の聖なる怪物」だけに、国際情勢を見る目は誰も彼にはかなわないだろうw

まだ執筆途中だがカストロさんは昨日、NATOの対リビア介入は避けられないLa Guerra inevitable de la OTANの記事をReflexiones de Fidelで書かれた。

先月の21日の記事で「米国は北大西洋条約機構(NATO)に命じ、数日中にリビアを占領することをためらわないだろう」と指摘され、それが現実になっていないのは国際世論が、帝国主義国に反発しているからだ。
クリントン国務長官は、リビア政府の暴挙に対し飛行空域の設定を真剣に検討し、NATO諸国とも協議を始めている。
アメリカの強襲揚陸艦キアサージと輸送揚陸艦ポンスは、リビアに対する軍事介入を目的に、2日、スエズ運河に入っている。
スエズ

以下はNYタイムズ3月1日の電子版のU.S. Readies Military Options on Libyaの記事
Indeed, there is an element of gunboat diplomacy to the talk of military action. Besides reassuring protesters, a senior American official said, the naval vessels and warplanes could be used as a show of force to embolden members of Colonel Qaddafi’s military to turn on him. The announcement of American military planning could have an impact even without carrying out any operations, the official said.
(西側の)軍事行動は砲艦外交(gunboat diplomacy)のような要素がある。米国のある高位官僚は「米国の軍事計画は実際の作戦ではなく発表するだけでも波及力が大きく、リビアの軍部がカダフィに対抗するよう刺激する武力示威になりうる」と話した。
※外交交渉において軍艦などの軍事力による威嚇などの間接的な使用によって相手政府に国家意思を示し、また心理的な圧力をかけることで交渉を有利に進める外交政策

A NATO operation could produce a similar backlash, given the bitter residue of European colonialism in North Africa.
NATOの軍事作戦は、北アフリカにおける過去の植民地主義の苦い経験に似た反発を、浮上させ得る。

帝国主義諸国は、リビア反政府支援の建前のもとに北アフリカの産油地帯を軍事的に支配し勢力下に収めることを狙っているのは明らかだろう。私服を肥やしている似非革命家カダフィは民衆によって打倒されるべきかもしれないが、それと外国の介入は別の問題だ。スエズ運河から紅海入りし、リビア介入の段取りを果たしたアンクルサムの軍事侵攻を許さないためにも、国際世論はマスメディアの情報かく乱に対抗すべきだろう。

人道支援の名の下、リビアから原油を搾取するために砲艦外交を行うアメリカ。19~20世紀にかけて中南米でモンロー主義下で棍棒外交を繰り返してきたアメリカだが、21世紀では中東、北アフリカでも同じようなことを繰り返そうとしている。
原油欲しさに、他国の上空を飛び交おうとする北アメリカのハクトウワシの厚かましさには、呆れるしかない。