カストロさんは何故リビア情勢についてこれまで執筆されてきたのか?今年、カストロさんが書かれた「フィデルの考察」を基に僕の見解も交えて書いてみようと思う。カストロさんとカダフィ大佐が初めて出会ったのは1977年。↓の写真はカストロさんがリビアを訪問したときのもの。カダフィは中東で最も反欧米の強硬派だったことや、数々の極端で奇怪な言動から「砂漠の狂犬」「アラブの暴れん坊」とも呼ばれた、そうだ。さしずめ、カリブとアラブの暴れん坊コンビといったところかなw
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カダフィが革命(単なるクーデターという見方もある)を起こしたのは1969年。カストロさんが訪問した77年までには、農地改革、石油の国有化、教育や医療水準の向上が実現しつつあった。この訪問から2年後、カストロさんは非同盟諸国首脳会議事務総長に就かれ、第三世界諸国を率いられる。第三世界の側から帝国主義に対して戦いを挑む点では共闘関係にあったと言えるだろう。

今年の二月から、リビア情勢について執筆活動を続けられてきたカストロさん。NATOが介入した紛争はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ紛争、アフガニスタン紛争 (2001年-)、そして今年のリビア騒動。過去の紛争でNATOがやって来たことを非難されてきたカストロさんは、誰よりも早くリビア占領計画について世界に発信された。
2011.02.23 NATOのリビア占領計画 El plan de la OTAN es ocupar Libia【 Reflexiones de Fidel】
2011.03.04 NATOの対リビア介入は避けられない La Guerra inevitable de la OTAN
中東で大きな地殻変動が起きている中、極東の日本でも文字通り大きな震災に見舞われたのだ。。
2011.03.13 世界を震撼させる2つの地震 Los dos terremotos
今年は、国内で戦後最も悲惨な出来事が起きた。そして世界では金融危機が叫ばれ、中東ではあちこちへ民主化という名の火の粉が飛び散っている。それだけに、テレビニュースが報じる事も混乱しているのが現状だ。リビアで一体何が起ころうとしているのか?これまで帝国主義の挑戦に立ち向かってこられた老兵カストロさんの書かれることを実体験に根付いている。

今年は、バイーア・デ・コチーノス(プラヤ・ヒロン侵攻事件、俗にピッグズ湾事件)でアメリカのCIAが支援した亡命キューバ人部隊を撃退して50周年の節目でもあった。
2011.04.16 壮大な軍事パレード~プラヤ・ヒロン50周年記念~Comenzó el desfile militar y popular
キューバとアメリカは革命達成直後は仲良くやっていた。しかし憎きニクソンがアイゼンハワーに対してカストロさんは共産主義者だと言い放ち、国有化の賠償提示を跳ね除けてキューバ革命を退けたアメリカ。自国の裏庭に都合の悪い政治体制が出来れば破壊工作(今風に言えばテロですな)も平然と行い続けてきた。

そして61年4月の侵攻事件が起きたわけだが、卑劣な帝国主義者はカストロさんが率いる革命軍によって撃退された。この侵攻事件はキューバに対して社会主義を宣言する契機ともなった。
2011.04.15 プラヤ・ヒロン侵攻から50年目~社会主義化したキューバ革命~First Blood
このアメリカの手前勝手によるキューバ革命に対する拒絶が、後に人類史上もっとも危険だったキューバ危機への扉を開いた。このようにキューバは、大国の思惑によって右往左往させられてきたのだ。

リビアもまた同様に大国の思惑に悩まされ続けてきた。1999年以降、リビアはアメリカ、フランスやイギリス、イタリアなどNATO諸国との関係が好転し、2006年にはアメリカのブラックリストからも削除された。欧米諸国との外交も再開された。しかし事態は急変、今年に入ってNATO軍が国民の叛乱に乗じて空爆したのだ。明らかになりかがおかしい。異常だ。しかし、この異常な事態に対して疑問を投げかける人は少ない。メディアのあからさまな情報操作、洗脳から人々は目覚めなければならない。

だからといって僕はカダフィ大佐を擁護しているわけではない。カストロさんもまた、共産主義者であり(この点で僕とカストロさんとも違うわけだが)何よりも第一にホセ・マルティ主義者なのだ。一方、カダフィは冷戦の時代に資本主義と共産主義を否定していた。したがって、カダフィの政治思想、宗教的思想に賛同されているわけではない。民主革命の美名の下、リビアの地下に眠る膨大な石油目当ての帝国主義国に対して、カストロさんは筆を取り、「フィデルの考察」欄で戦い続けられているのだ。
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Reflexiones del compañero Fidel sobre el tema de Libia
下記はカストロさんがリビア情勢について書いた記事の一覧。上記のリンクCubaDebate上でスペイン語ですが閲覧可能。
El plan de la OTAN es ocupar Libia. 21 de Febrero de 2011
2月21日 NATOのリビア占領プラン
Danza macabra de cinismo. 23 de Febrero de 2011
2月23日 仮装したシニズムは踊る
La Guerra inevitable de la OTAN. 2 de marzo de 2011
3月2日 NATOによる戦争は不可避
La Guerra inevitable de la OTAN (Segunda parte). 3 de marzo de 2011
3月3日 同上Ⅱ
La OTAN, la guerra, la mentira y los negocios. 9 de marzo de 2011
3月9日 NATOによる戦争、偽善、駆け引き
Los dos terremotos. 11 de marzo de 2011
3月11日 2つの震災
Los desastres que amenazan al mundo. 14 de marzo de 2011
3月14日 世界を脅かす元区
La Guerra Fascista de la OTAN. 28 de marzo de 2011
3月28日 NATOによるファシスト戦争
Un fuego que puede quemar a todos. 27 de abril de 2011
4月27日 すべてを焼き尽くさん戦火
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20世紀には多くの独裁者が現れたが、彼らの原動力となっていたものは、一体なんだろうか?
使命感か、国家の主権を護るという大儀か、あるいは国民に対する愛からか?はたまた権力欲からか?

ノーベル文学賞作家のバルガス=リョサは、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島のドミニカ共和国で30年以上独裁体制を築いてきたラファエル・トルヒーリョを、「チボの狂宴」という文学を通じて描いた。リョサはウラニアという架空の女性を登場させることにより、トルヒーリョという怪物を揺り動かしている原動力の一つは、性欲であることを示した。これはリョサが若いころから一貫して描き続けてきたテーマ、日経の書評の言葉を拝借すれば「人間の根本を動かしているのが性であり下半身の事情であるという主題」。去年読んだ、「楽園への道」では、リョサがゴーギャンを同じ主題から描かれていた。
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表紙の絵画は、アンブロージョ・ロレンツェッティが描いたフレスコ画「悪政の寓意」が用いられている。なんとも奇妙に見えるこの絵画は、「チボの狂宴(La Fiesta del Chivo)」にいかにも相応しいw。Chivoとはスペイン語辞書で引いたら、子ヤギの意と表示される。訳者解説によれば、山ヤギの意で、精力の強い動物である山ヤギはたくましい男性性の象徴とされることから、”チボ”には単なる「山ヤギ」だけでなく「手に負えない発情期の山ヤギ」という意味もある。好色で非道な暴君トルヒーリョにぴったちのあだ名だが、作中で描かれる独裁者は既に70代の老齢w「チボの狂宴」といタイトルはいろいろな解釈があるが、僕はドミニカで長年繰り広げられたトルヒーリョ時代の狂気が感じ取れる。絵画の中心の人物はトルヒーリョ、周りに金魚のフンのように付き添う側近、そして捧げられる子羊は架空の登場人物ウラニアを象徴しているようにも解釈できる...

「チボの狂宴」に捧げられたウラニアが過去のトラウマを秘め、90年代のドミニカへ帰国するのがこの小説の冒頭。各章は暴君の生贄となった複数の語り手の主観的視点からの描写から構成されている。語りの手法の巧みさは、ここで改めて指摘するまでもないが、読者は「緑の家」といった難解なリョサの著書と違い、すんなり500ページ超の、この小説を読破できると思う。

この小説の時代設定は、先にも記したウラニアの90年代後半(現代)と、トルヒーリョが暗殺された年の1961年で、この二つの時代が巧みに交錯する。今から50年前の5月30日に彼が暗殺される一日が、この小説で記されている。暴君トルヒーリョは、側近の裏切りや、風当たりの強い国際世論、そして何よりヤンキーの経済封鎖に悩まされていた。当時のカリブ海の情勢は非常に緊迫していたのは想像に難くない。ドミニカは隣国ハイチとの血の歴史がある。また、隣の島のキューバからは、カストロの支援を受けた亡命ドミニカ人ゲリラが、1960年6月14日に空からドミニカのコンスタンサ、次いで海からマイモンとエステロ・オンドへ侵入さた。政府軍と交戦して多数の死者が出たこの事件では、忠実な犬と思っていた家臣から裏切られ、トルヒーリョの疑念は強まっていた。また、一ヶ月前に起きたプラヤ・ヒロン侵攻事件では、キューバの次に侵攻の憂き目に遭うのはドミニカではないかと暴君に感じさせたことに違いない。

それでも、アメリカの海兵隊に鍛えられた頑強なトルヒーリョは一分たりとも無駄のないスケジュールをこなし、家臣を見事に操り、また巧みな手法で人身を手中に握り政権を堅持させていくさまが描かれている。そんな暴君トルヒーリョの至極の愉しみ、原動力が冒頭でも述べた、性欲であり、リョサはこの作品でラテンアメリカの作家らしく情熱を持って描き出しているw
以下は、そんな暴君の過激な台詞の原文。
«Esta noche, en la Casa de Caoba, haré chillar a una hembrita como hace veinte años». Le pareció que sus testículos entraban en ebullición y su verga empezaba a enderezarse”12章末より
また最終章では凄まじい狂宴が描かれている。以下はその一文
“Romper el coñito de una virgen excita a los hombres”
なお、 coñitoは訳書では伏字になっていますwノーベル文学賞作家の作品が伏字になるとはww
リョサが真剣に描こうとしているテーマなだけにちょっぴり残念。しかし伏字にしないと出版できないのかもしれませんねw

チボの狂宴チボの狂宴
(2010/12/25)
マリオ・バルガス=リョサ

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勿論、この作品はフィクションに過ぎない。しかし文学だからこそ描けるものもある。この小説のクライマックスでは、残虐な拷問の描写や上記の狂宴が描かれているので、閉口させられる人もいるかもしれない。それでも、この小説はリョサがノーベル文学賞の受賞を決定付けた傑作なのだ。
受賞理由の「権力構造の地図と、個人の抵抗と反抗、そしてその敗北を鮮烈なイメージで描いた」はリョサの作品全般に言えることだが、明らかにこの作品を示しているのではないだろうか。ラテンアメリカの作家は日本ではあまり親しまれないし、マイナーのようだが、一人でも多くの日本人がリョサの本を手にとってほしいと思う。