マルティ、ゲバラら見守る革命広場でアメリカ合衆国国歌「星条旗」とキューバの国歌「ラ・バヤメーサ」が演奏され、オバマ大統領がマルティ記念碑に献花されました。この映像をキューバ国民はどのような思いで見ていたのだろうか。

今週の22日、ハバナの中心部、プラド通りに面している大劇場で合衆国のオバマ大統領がキューバ国民に向け歴史的な演説を行いました。
Gran teatro

旧国会議事堂の隣にある大劇場(Gran Teatro de La Habana)。旧市街地と新市街地の境に位置するプラド通り。去年のキューバ旅行前半ではこの近辺のパルケ・セントラルに泊まっていましたが、大劇場(グラン・テアトロ)は夜になると綺麗にライトアップされていました。現在は国立バレー団やオペラ団が公演を行っていますが、もともとはスペインのガリシア移民が集う建物だったそうです。カストロさんもガリシアにルーツを持つ家庭に生まれました。

 これまでキューバの歴史を追って来た僕にとって、この大劇場からキューバ国民にむけたオバマの演説はなかなか感慨深いものがありました。両国間の関係がよく分かる内容となっているので、時間がある方はフル版で聴かれることをお薦めします。下記では少しだけこの演説について紹介しようと思います。

冒頭ではキューバ訪問中に偶発的に起きたブリュッセルで起きたテロ事件に対し言及し、これに対し、国籍、人種、信条などの違いを超え連帯していく意思を表明。次に家族とともに迎えてくれたキューバに感謝の意を表されました。そして大統領はキューバ独立の使徒ホセ・マルティの詩の一節を引用、“Cultivo una rosa blanca.”直訳すると「私は白い薔薇を育てます」。マルティは親友だけでなく憎むべき敵のためにも白薔薇を育てると詠んでいます。これと重ね、オバマ大統領は今回の訪問はキューバ国民に敵意がないこと、両国間の平和のために訪問したことを伝えられました。

 次にオバマ大統領は両国間の引き裂かれた歴史について、自身のことも交えて語り始めました。ちょうどキューバ革命が起きた年にオバマ大統領の父がケニアから合衆国へやって来たこと、ピッグズ湾事件が勃発した年にご自身が生まれたことに言及。そしてその翌年、世界を震撼させたいわゆるキューバ危機が起きたことに触れ、「私は米州の冷戦の遺物を葬り去るためにここに来ました。キューバ国民に友好を差し伸べるために来たのです」と訴え拍手喝さいを得ました。冒頭でベルギーで起きたISによるテロ事件に対し、世界中の国が連帯して対峙していくことを表明されましたが、演説前にちょうど偶発的に起きた事件とはいえ、時代の移り変わりを感じさせられます。半世紀前では世界はイデオロギーを巡って東西に二分されていましたが、今日においてはテロに対する戦の時代となりました。

その後、両国がいかに共通の文化、軌跡、価値観を共有しているかを伝え、一方で体制の違いについても言及。国交正常化に至った経緯、その必要性を訴え、スペイン語で「私はキューバ国民を信じているCreo en el pueblo Cubano」と述べ、単なる政府方針だけでなく両国民間で真の国交正常化を果たしていこうと呼びかけました。

一方で、正常化の流れに反対の立場の議員が議会にいることも触れ、次期大統領選で共和党に勝つための候補に、民主党は女性と社会主義者の候補者がいるが(ヒラリーとサンダース候補のこと)、キューバ革命が起きた1959年では考えられないことだ、いかに合衆国の民主主義が進展したかを体現していると述べると、観覧席は喝采とともに笑い声が湧き上がりました。

この様な調子でオバマ大統領は演説を続けられたが、観覧席からの反応も含め概ね好評を得ていたのではないかと思います。特にキューバの若い世代に対し、変化を起こして欲しいという強い期待が感じ取れました。

「キューバの未来はキューバ国民の手に委ねられている」El futuro de Cuba tiene que estar en las manos del pueblo Cubanoとスペイン語で訴えたオバマ大統領。もちろん今回の訪問で何かが急に変わるというほど甘くはありません。大統領が対キューバ経済制裁を廃止すると言ったところで、議会の強い反対がある以上、ことは進展しませんし、その他にも人権問題を巡った両国間の食い違い、さらにはグアンタナモ基地の問題と課題は山積しています。

 しかし、今回の訪問の目的、すなわちキューバ国民に合衆国に対し親近感を与えること、特に若い世代に対し変化を促すメッセージを伝えることに関しては概ね成功したのではないと思います。すべてはキューバ国民に好感を与えるための策といえばそれまでですが、政治は演出が肝要。今回の外遊でオバマは旧市街地を散策したり、野球観戦を行ったり、さらには合衆国大使館にキューバのコメディアンの協力を得て友好ムードを演出させる動画まで制作されました。

Yesterday, President Obama made history. For the first time ever, Air Force One touched down in Havana, Cuba: http://go.wh.gov/sBvtMt #CubaVisit

The White Houseさんの投稿 2016年3月21日



 ついにパンフィロと会談されたオバマ大統領。初めてのドミノに加わり、キューバ人のマシンガントークに付き合わされ、疲れが顔に出ていますね。野球観戦には専用のリムジン車ではなくビシタクシー(人力車の自転車版)でスタジアムへ向かわれてはと提案される羽目に。今どきの大統領は外交のためにコメディ出演までしなければならないから大変。

無事キューバ訪問を終えた後、一息つく間もなくアルゼンチンへ向かわれ、今度はタンゴを踊られました。。ペロニスタのキルティナス大統領に代わり新自由主義路線を打ち出したマクリ大統領と新たな関係を築くのが狙いでしょう。私のアルゼンチンの知人はまたアルゼンチンに暗黒の時代が訪れると嘆いていましたが。

 アルゼンチンも含めて左派ラテンアメリカは路線転換を迫られているのが現状ですが、もちろんこれに対し猛反発する国民もいます。友好ムードを演出し、巧み人心を掴んで来ようとする合衆国。しかし、ラテンアメリカでは合衆国から干渉され、軍事政権がはびこり多大な犠牲を出した記憶が真新しい。これまでさんざん合衆国に踊らされていたラテンアメリカですが、どのように折り合いをつけ、諸問題に取り組んでいくかが注目されます。
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