少し大げさなお題だが、僕の大好きな評論家である寺島さんの著作。
ビジネス展望やサンデーモーニングで、最近は東北復興の青写真について論じられている。被災者のことを考えると、ライフラインの復旧は至急の課題だが、都市構想や、産業集積の在り方などは、腰を据えて考えなければならない。寺島さんが言われるとおり、政治家は一度深呼吸してから青写真を描くべきだろう。

世界を知る力 (PHP新書)世界を知る力 (PHP新書)
(2009/12/16)
寺島 実郎

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4章構成で、どの記述も面白いが、僕がとりわけ興味深かったのは第2章”相関という知”で記述されている華僑とユダヤ人。僕は、大学で日本のある商人集団と華僑、ユダヤ人の広域志向的な商いの手法について卒業論文を書いたことがある。これらの商人の広域志向のビジネスを可能にしたのは、寺島さんの言葉を借りれば正に、「分散型ネットワーク」ということになるだろう。

僕はユダヤ商人のロスチャイルド家について、文献などを漁り、単なる読書感想文に過ぎない卒論という駄文を大学に残してきたわけだがw寺島さんによる記述は実体験に基づいた、今のユダヤ人が記述されている。実業界に携われた方から出た言葉は違いますね。寺島さんは、ユダヤ人の特質を「国際主義」「高付加価値性」の2点にあると指摘されている。

2章では「ユニオンジャックの矢」についての記述も面白い。この概念は、イギリス連邦を繋ぐ矢、すなわち本国からインド、シンガポール、オーストラリアを繋ぐ直線。現在はコモンウェルス・オブ・ネーションズと改称されているが、「英語という共通言語」「文化遺産の共有」「行政・教育・司法システムの近似」など社会生活を支えるインフラの共通性を活かして、未だに強いネットワークで結ばれている。

話は少し逸れますが、今日のイギリス王室のセレモニーは歴史が感じられました。ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの結婚式がロンドンの中心部にあるウェストミンスター寺院で行われ、国歌God Save the Queenが歌われた。

僕が言うと軽く聞こえますが、歴史の重みが感じられますねぇ。。
前世紀の初めまでは世界の面積の四割を占める巨大帝国。世界人口の三分の一を支配していたのも、過去の栄光に過ぎないが、遺された遺産も大きい。それは世界中から搾取したダイヤや、宝石ではなく、築かれたネットワークにあるわけですね。

ユダヤ、華僑のネットワーク、ユニオンジャックの矢などは表面には現れない地下水脈。国際的な視野を持つためにも、このような水脈にまで視野を広げる必要がありますね。

この本のコンセプトは、僕が日頃から意識していることではあるが、それを実現できているかは別の話ですね。。。「世界を知る」ためには、寺島さんの言葉を借りると膨大な情報を体系的に捉える「鳥の眼」とフィールドワークから始まる「虫の眼」が必要。僕はどちらも欠如しているが、後者の「虫の眼」を培う必要性を感じる。例えばキューバを語るにしても、CubaDebateなど豊富なネット上の情報や図書館の図書を読んだだけでは足りない。
現地のキューバ人と、何気ない会話でもいいから話を通じて得た情報、「自分自身の目」で見た情報がより一層深い考察を可能にするに違いない。

寺島さんは、次の記述で締めくくられている。

わたしたちは、「世界を知る」という言葉を耳にすると、とかく「教養を高めて世界を見渡す」といった理解に走りがちである。しかし、そのような態度で身に着けた教養など何も役には立ちはしない。世界を知れば知るほど、世界が不条理に満ちていることが見えてくるはずだ。その不条理に対して怒り、問題意識が、戦慄するがごとく胸に込み上げてくるようでなければ、人間としての知とは呼べない


ゲバラの次の有名な一句と重なる。
Sobre todo, sean siempre capaces de sentir en lo más hondo cualquier injusticia cometida contra cualquiera en cualquier parte del mundo. Es la cualidad más linda de un revolucionario.
とくに、世界のどこかで、だれかに不正な目に遭っているとき、いつでもその痛みを最も強く感じ取れるようになりなさい。それこそが、革命家の最大の美徳です。

サルトルは、ゲバラは優れた知識人であったと評価している。僕はサルトルの言及した知識人については深く心得てはいないが、寺島さんが上記で語られた問題意識をもって、世界中の不条理から目を背けず、行動する人、その情念にサルトルの示す真の知識人の魂があるのではないかと感じる。

ゲバラやフィデルは、真の知識人であることに違いないが、僕にも彼らの半分でも、真の知識人としての覚悟を引き継ぐことができればなぁ。。。と思う。
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