昨年の10月に缶直人前首相がTPP交渉への参加を検討することを表明してから1年が経とうとしている。TPPは物品貿易の関税の撤廃を志向する。ヒト、モノをすべて商品化することへ帰結するであろうこの協定を締結すれば日本はどうなるのか?僕は当初からTPPについては、反対の立場だった。

そんな僕に、もう少し視野を広げて、自由貿易の問題点を示唆してくれたのは、こないだ図書館で借りてきたトッドさんの「自由貿易は民主主義を滅ぼす」。タイトルだけ見たら、なにか極端な内容の書物かとも思えるが、トッドさんの名は知っていたので読んでみることにした。日本にトッドさんが訪問されたときの公演の内容が収録されている。まだ、トッドさんの著作は未読だったが全面的に共感出来た。

自由貿易は、民主主義を滅ぼす自由貿易は、民主主義を滅ぼす
(2010/12/22)
エマニュエル・トッド

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自由貿易というと聞こえは良いのは、僕たちが自由と聞くと政治的な自由を想起するからだ。今日では「経済的自由」と「政治的自由」が混同され、前者を無条件に容認されている現状をトッドさんは指摘されている。確かに自由と聴くと、響きがいい。ナチスに対して抵抗したド・ゴールの自由フランス軍はカッコイイ響きを持つものだ。この「政治的自由」は人類が普遍的に希求すべき概念であるに違いない。しかし、「経済的な自由」つまり現在世界を覆いつくしている新自由主義は、どうなのか?新自由主義の自由は、人に対する自由ではなく、市場経済に対する自由を意味しているに過ぎない。

民主主義に不可欠の要素である自由だが、新自由主義がもたらす弊害は逆に民主主義を滅ぼすという、トッドさんの主張には共感できる。そこで現実的な解決策としてトッドさんは、EU内での保護主義を提唱されている。保護主義というと、先の大戦の戦間期を彷彿させられるが、トッドさんが主張されるのは、排外主義から来るブロック経済ではない。有効な解決策だと思うが、あくまで文化的、経済的に均質な欧州での施策であって、不均衡なアジアでは応用できないのが惜しい。

それでもトッドさんの話からは、国益を離れ、国家間の対等な関係を築く施策の構築に役立つだろう。それは悪い意味でのアメリカ的(かつてのソ連も含む)な価値観からの脱却でもある。TPPは太平洋という地域限定協定だが、この自由貿易を促す取り決めは、国家間の文化の多様性を否定する。最終的にはアメリカ的な価値観一色に染め上げるのが狙いであることは明らかだ。もともとこの協定は極度に貿易に依存せざるを得ない、小国間の取り決めだったらしいが、そこにアメリカが割り込んで来て発展して言った話しだった。

テレビを観ていても、報じられるのは震災復興のことが中心でTPPのことが報道される機会が少ない。戦後史上最大の厄介ごとだっただけに、仕方ないが、今後の日本経済を左右するであろう重要な取り決めに対して、もっと国民は議論を深めるべきではないだろうか。議論をする際には、既得権益から離れ、トッドさんが指摘されている自由貿易の問題点を踏まえてもらいたい。南米大陸のように、アジアがなってしまったら取り返しがつかない。
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