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 先週、モハメド・アリが亡くなられた際、SNSのニュースフィールドに流れて来た彼の格言が目に留まった。「危険に挑む勇気がないものは、人生において何も成し遂げられない。(He who is no courageous enough to take risks will accomplish nothing in life.)」。モハメド・アリはゲバラやカストロさん同様、ヒトをひきつける何かを持っている。人々は彼らをカリスマと呼ぶ。

 キューバのメディアCubadebateではラウル・カストロ国家評議会議長が哀悼の意を表されたニュースとともに、96年にモハメド・アリがカストロさん(フィデル・カストロ前国家評議会議長)とハバナで会われた際の写真、動画が掲載されていた。アリはいわゆる「リングの外での闘い」でも有名で、カストロさん同様に特に60年代のメディアの注目をあつめた。両者は国家、人種の尊厳のために闘い、合衆国政府と対峙し、巨大権力に屈することなく信念を貫いた。
VII Cumbre del Caribe recuerda a Muhammad Ali, el amigo de Fidel (+ Fotos y Video)


 動画はアリがハバナのホテルで自慢の手品を披露するシーン。赤いハンカチが宙に舞ったかと思いきや、アリの手のひらの中に華麗に消え去った。これにはカストロさんも感動され拍手を送られた。「どこに隠したんだい?」と質問されるカストロさんに対し、アリはあっさりマジックのネタ証しをする。手品とはいえヒトを欺くことは彼が信仰するイスラム教の教義に反するからだ。指に似せたゴム製の指サックの中にハンカチが隠されたことを知ったカストロさんは、皆の前でアリの手品を実践し披露された。これをグアジャベラを着られているアリの友人であるキューバの金メダリストのボクサー、ステファンソンが優しく見守られている。

 この動画で紹介されたアリのキューバ訪問は50万ドル相当の医薬品を寄付する慈善事業を目的に行われた。訪問された96年は悪名高いヘルムズ・バートン法が合衆国によって発行された年でもあった。ソ連崩壊後、同盟諸国を失ったキューバの危機につけ込み、合衆国は経済封鎖によって革命政権打倒をこころみたが、96年に悪法によってキューバをさらなる物資不足へ追い込んだ。アリのキューバへの支援は心強かったに違いない。

 モハメド・アリのキューバ訪問の詳細についてはエスクァイア誌のGay Talese氏による”Boxing Fidel”に詳述されている。どうやらカストロさんと会われたアリは一切言葉を発せられなかったようだ。先述の持病と会談が夜に行われたためだろうか、アリはカストロさんの前で目を閉じ眠ってしまう。カストロさんも事情を心得られていたのだろう、アリが一切話さないにもかかわらず、そのことには触れられなかった。代わりにアリの奥さんに彼らの住まいのミシガンについて話されていた会話が取材記事に記されている。アリの友人であるステファンソンは「アリ、どうして黙ってるんだい」と英語で彼に耳打ちされたが、伝説のボクサーは伝説の革命家を前に黙したままであった。

 アリが沈黙を保った理由は上記事でも定かにされていないが、彼が遺した言葉に次のようなものがある。「良い答えが思い浮かばない時は、沈黙は金なり("Silence is golden when you can't think of a good answer."」。アリは9代の合衆国大統領やCIA,マフィアらに屈せず今日まで生き延びて来たカストロさんを敬服されていたという。敬愛するキューバの指導者を前にしたからこそ、相応しい言葉が見つからず黙してしまったのではないか、私はそう思うのだ。

 他の動画クリップではアリとカストロさんが互いの拳を受け止め合われているシーンが紹介されている。アリとカストロさんはともに雄弁なカリスマでヒトをひきつけて来られたが、尊敬しあっている両者の間では拳を交わすだけで十分だったのかもしれない。

 別れ際、カストロさんはアリの大事な手品の小道具である指サックを返してないことに気づかれる。返そうとされるカストロさんに、同席されていたアリの写真家、ハワード・ビンガムは「アリはあなたに持っていていただきたいと思っています。」と言い残して行かれた。カストロさんはモハメド・アリの一行を見送り、残されたアリの手品の小道具を面白そうに眺められ、ポケットにしまわれた。 

 カストロさんに託された小道具でアリは多くのヒトを虜にされて来た。「これからも世界中の注目の的であってくださいね。」という想いが込められていたのではないかと私は思う。

 96年のキューバ訪問から20年が経った今年の6月3日にモハメド・アリは74歳で亡くなられた。20年前当時のカストロさんと同じぐらいのご年齢で他界されたと思うと、彼の死が惜しまれる。数多くの著名人が哀悼の意を表されたが、カストロさんもきっと彼の死を悼まれたことだろう。

ゲバラがそうであるようにカリスマはいつまでも人々の心の中に生き続ける。アリがキューバ訪問した翌年の97年にゲバラの遺骨がキューバに返された際に、カストロさんはサンタ・クララで行われた演説で次のように述べられた。
”戦士は息絶えても、思想は絶えることはありません。(...)現在、チェはイゲラ村にはいません。いまやチェは守るべき正義があるあらゆる所にいるのです。”

 モハメド・アリはこれからも人々の心の中で生き続ける。

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